閻魔亭山菜探索録 記録雀 都市

閻魔亭山菜探索録 記録雀 都市
それは、カルデアの一行が我が閻魔亭を訪れてから暫く経った頃のことだったでチュン。

ご存知、あのおっかない皇女様が、魔猿達を完膚無きまでに叩きのめした次の日のこと。二人のお姫様はカルデアのマスターに言ったでチュン。

「マスター。昨日も言ったけど、わたし達にも何か出来る事はないかしら?」

「昨日のお詫びというわけではないけれど、やっぱり私達も何か、マスターの手伝いがしたいの」

マッハで断ったでチュン。

即答だったでチュン。

すると、二人のお姫様はこれ見よがしに悲しそうなお顔をするのでチュン。

「そう………よね。やっぱり、わたしなんかじゃマスターの助けにはなれないのよね………」

「ごめんなさい、マスター。醜態を晒した罪滅ぼしがしたかっただけなのだけれど………」

こうなっては、マスターに逃げ場はないチュン。

山菜取りの人員が不足していた事もあり、お二人にはその役目を果たして貰う事になったのでチュン。

ちなみに………それを聞いて卒倒した音楽家や処刑人、果てはスパイやマンモスがいた事は、公然の秘密というやつでチュン。

ともかく、二人のお姫様は念のため護衛 (マスターなのに?) として付いていったマスターと共に、裏山へ山菜取りに出かけて行ったのでチュン。

都市も裏山に詳しい雀として同行したチュン。

しかし、運が悪いと言うべきか、山菜はなかなか見つからなかったチュン。

いつもなら然るべき場所に生えている筈の山菜達は、まるで忍者か何かがひっそりと狩り尽くしたように消えていたのでチュン。

気がつけば我々は山菜を求めて、うちらですら知らぬ深い深い山奥まで入り込んでしまっていたチュン。

行けども行けども帰り道は見つからず、日はどんどんと傾き、空にはごうごうと風が立ち込み、更には雨まで降ってきたチュン。

全身がずぶ濡れになり、我々は雨風を凌げる所を求めて走りに走ったチュン。

その時、怖くない方のお姫様が、岩陰にひっそりと存在した洞窟を発見したのでチュン。

もう夜も遅く、今日はここで野宿するしか方法はなさそうだったチュン。

我々は枯れ木に火を投じ、火を起こしたチュン。

雀のうちらはともかく、マスター達は人間なので濡れた服を乾かさない事には風邪を引いてしまうそうチュン。

意外にも、お姫様2人には歳の近い男性であるマスターの前で服を脱ぎ、下着姿になる抵抗はなかったチュン。こういう状況には慣れているようだったチュン。

焚き火にあたりながら身を寄せ合い、互いの身体を温め合う3人。

当然、話は弾んだチュン。多くの彼らがしてきた旅の物語が、火音と共に紡がれたチュン。

都市も心を躍らせながら聞いたチュン。

数多の英霊達と共に数多くの旅をし、そしてその全てを乗り越えてきた、彼らカルデアの冒険譚を。

涙あり、笑いあり、感動ありの大スペクタクルだったチュン。

————しかし、それがある時ふと止んだのでチュン。

重い重い、そして長い沈黙が続いたでチュン。

あまりの長さと居心地の悪さに、つい訳もなく叫び出したくなったほどチュン。

時刻はもう深夜近く。彼らは昼から何も食べてない。よく考えれば、これは鳥的にヤバい状況では? と気がついたチュン。

ひょっとして、焼き鳥にされるチュン?

そんな考えが僅かに過ぎったチュンが、それは直ぐに違うと理解させられたチュン。

何故なら3人は揃って顔を赤くして、なんだかもじもじと落ち着かない調子チュン。食欲というより、何かもっと別の………強い欲求を覚えている様子だったチュン。

幾らか経った頃、3人はまるで示し合わせたように顔を上げたチュン。

六つの申し訳なさそうな、自己嫌悪と悲嘆が入り混じった目が、都市を見ていたでチュン。

都市は完全に邪魔者だったのでチュン。

「都市は雀でチュン。雨の中で寝ることくらい、朝飯前ってやつチュン」

3人の顔を見る事もなく、都市はそう言って一目散に洞窟を出たチュン。

それでも洞窟を出る時、ふと振り返ってみると、もう既に3人は一矢纏わぬ姿で………おおっと! これ以上は野暮チュンね。

その後、何があったのかはわからないチュン。

3人の場を顧みない、熱く激しい逢瀬の声が、洞窟の反響で裏山中どころか閻魔亭にまで響き渡っていたこと。

それを聴いて錯乱した蛇と狐のために、閻魔亭が危うく火事になりかけたこと。

マスターを探しに裏山を彷徨っていた大魔女が、1人で寂しく泣いたことは、また別の話でチュン。

「雨って、こんなに冷たかったチュン?」

都市は一匹、暗い空を見て呟いたチュン。

考えてもみれば、閻魔亭の労働環境はこの空のようにブラックで、めんこい雀との出逢いもなく、恋愛なんてろくすっぽしてなかった事に気がついたチュン。

仕事にばかりかまけて、うちらはいつの間にか働くだけの社畜に落ちていたのでチュン。

ァアアアアン‼︎ マスター‼︎ ワタシニモチョウダイ‼︎

洞窟からは、実に楽しそうな声が聞こえてくるチュン。

雀は、なんでこんな思いをしなければならないチュン? 山菜を探しに来たはずじゃなかったチュン?

………ところで、あんな岩だらけの洞窟でもノープロブレムなんて、最近の若いお姫様は逞しいでチュンね。実は割と行き遅れな女将なら「絶対にいやでちー!!」と言いそうなところチュン。時代の移り気というか、自分が時代に取り残された気がしたチュン。

翌日、洞窟から出てきた3人はキラキラだったチュン。

2人のお姫様は幸せそうにマスターの腕に身を寄せ合い、自分が世界で一番幸せ、みたいな顔をしていたでチュン。

2人は閻魔亭に着くまで、決してその腕を離す事はなかったのでチュン。

———以上が、閻魔亭山菜探索録の記録でチュン。山菜なんて殆ど関係なかったチュン。

ただ、あの洞窟。マスターと2人のお姫様が愛を確かめ合ったあの洞窟は、恋愛成就の名スポットとして、長らくの間サーヴァント界で語り継がれる事になったそうチュン。

そしてスポットがあまりにも人気が出過ぎたため、話の元となった出来事を具に見ていた都市が、マイルームで閲覧出来るエピソード用として作成したのが、この記録チュン。

有料版では、腰の湯治のため閻魔亭を訪れた某教授が盗聴………録音した、洞窟でのマスターたちの会話が主録されているチュン。もちろん、フルボイスチュン。

転んでもタダでは起きない。それが閻魔亭スタイルってやつチュン。

チュン? どうしたチュン? マスターに2人の王妃様? そんなに肩をワナワナと振るわせて………何か、マズいことでもあったチュン?

………

マリーちゃんのモーション変更記念です!

ようやくですね! 待ちくたびれましたよ!

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